このシリーズの展示には、毎回少しの文章を添付しています。
〈
作家からのメッセージ
〉
HIGO-ROCK ! HIGO-ROCCA ! プロジェクト第5花は、熊本市の市花、肥後椿です。
つややかな常緑の葉、おめでたい紅白の花の椿は、太古の昔、悪霊退散の呪術的霊木として扱われたといいます。その実のかたちが似ていることからでしょうか、海石榴とも呼ばれ、万葉集にも歌われました。中から弾けだす種子からは油が採れ、一般に食用・薬用でした。欧州には、17〜18世紀の交易により初めて持ち込まれ、大流行。ジュゼッペ・ヴェルディのオペラ「椿姫」にも描かれました。現代では、ココ・シャネルのカメリアモチーフでも広く知られたことにより大変愛されている花木です。
肥後椿は、門外不出の秘技、交配研究により生み出された芸術です。平たく開く一重の大きな花弁と力強く広がる梅芯が特徴で、山椿と大きく異なります。その品種は100を超えます。気格と美を競い合い、命を育て咲かせ続けた「花連」の侍たちの情熱とプライドに魅了されたイタリア人肥後椿コレクターのフランコ・ギラルディは、著書「HIGO CAMELLIA」のなかで肥後椿を「第三千年紀のための花 ( un fiore per il terzo millenni )」と評しています。「未来に繋ぐべき花」ということでしょうか。
「愛の熱」によって「意識的に」伝え守られ展開されるべき文化や思考は、日常の中にあります。災害や戦渦で、もしくは時代の潮流に取り残され消滅の危機に晒されることもあるでしょう。時には全く客観的な異人の目によって尊ばれ、価値が与えられ、土地を換えつつ生き残っていくのかもしれません。
2017年2月22日
Il calore della terra( − 大地の熱 (肥後椿2017.2)
ミクストメディア(熊本市民の方から募った着物、木、皮革、セラミック、鈴、硝子、プラスチック、紙などの混合使用)
2017年
今田淳子
紅殻。
産み、育む潮。
愛と意志の熱。
呑み込む。
霊峰。カルデラの器。
脈打つ。
瑞々しい石榴の粒。
念が彷徨う。
焼き畑の埋み火。
※ caloreとは熱、terraとは、土や大地の意のイタリア語
0 件のコメント:
コメントを投稿