制作期にちょうど「PASQUA(復活祭)」を迎えたことと、「この土地と土地に住む皆のこころの復活」をかけて、白い花を卵、3本の雌蕊を3羽の元気な雛鳥、雄蕊を雛鳥たちを優しく温め育む巣に見立てました。
このプロジェクトの最終花です。地震後の恐怖と不安を抱えながらも、一花一花咲かせるということに没頭出来た一年でした。
家族の古着物を材料としてご提供頂いた方、2ヶ月おきに1作品ずつ鑑賞していただいていた方、また、ここ今田淳子ウェブサイトニュースにてご覧いただいていた方、感謝しております!
以下、美術館展示パネルのための文章です。
〈 作家からのメッセージ
〉
熊本大地震後、肥後六花と共に1年が巡りました。約2ヶ月ごとにひとつの花を咲かせながら展開したHIGO-ROCK ! HIGO-ROCCA ! は、最終花の発表です。
「立てば芍薬、座れば牡丹」と言われる様に、芍薬は美しい女性の姿をたとえる花です。『詩経』には男女が別れの際に再会を約束する花として描かれました。絶世の美女小野小町に思いをつのらせた深草少将が毎日芍薬を植え続け、100本目の芍薬を手に亡くなったエピソードや、与謝野晶子の「緋芍薬 さします毒をうけしより
友のうらやむ花となりにき」という歌には、この花(特に濃い赤紫色の花)独特のなまめかしさ、妖しさを感じます。
薬学、真実と芸術の神Letoが芍薬エキスをのむことによりApolloとArtemideの双子を難産ながら出産した話, 医学神Paeonが化身して芍薬になった話など、芍薬はギリシャ神話にも語られています。漢方薬として現在も良く知られるその根の効能ですが、古代ローマでは20以上の病気の治療に用いられ、その魔術的・奇跡的な力から”Erba
beata(祝福草)“と呼ばれ、悪魔や魔女、嵐を遠ざけ、収穫や羊の群れを守る“厄よけ” の意味を持っていたようです。
肥後芍薬は、六花のなかでも最も古いものです。他の肥後花と同様、一重の大輪で、花芯がとても立派。品格に満ち凛とした様相です。
芍薬の学名はPeonia lactiflora。Lactifloraは「乳白色の花」を意味しています。清らかなひかりの母に包まれ、生命の萌え出づる春、復活の日をイメージしました。第6花、白の肥後芍薬です。
2017年4月26日
今田淳子
Erba beata – ひかりの褥(肥後芍薬2017.4)
ミクストメディア(熊本市民の方から募った着物、皮革、セラミック、鈴、硝子、プラスチック、紙などの混合使用)
2017年
今田淳子
Pasqua Fiorita !
復活祭、開花!
乳いろの大きな花。
曇天がひらく。
初源の光 さしこみ、プットーの 戯れる。
陽春の庭、うらら。
カーニバルのコリアンドリ、ちらちら。
※
エルバ ベアータは、イタリア語で「祝福の草」、パスクァは、イースター(キリスト復活祭)の意。
コリアンドリとは、謝肉祭の時期に街ゆく子どもたちがまき散らす色とりどりの丸く小さな紙吹雪のこと。プットーとはエンジェルのこと。ここで筆者は、小さな子どもたちのことを言う。
Pasqua fioritaは、作家の親しい家族が復活祭の日の挨拶で、一般的な言い回しではない。
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