2017年5月13日土曜日

Peonia HIGO Japonica 「HIGO-ROCK ! HIGO-ROCCA ! プロジェクト」、最終花の発表です!

只今、熊本市現代美術館にてHIGO-ROCK ! HIGO-ROCCA ! 肥後六花プロジェクト、第6花は肥後芍薬を発表中です。

制作期にちょうど「PASQUA(復活祭)」を迎えたことと、「この土地と土地に住む皆のこころの復活」をかけて、白い花を卵、3本の雌蕊を3羽の元気な雛鳥、雄蕊を雛鳥たちを優しく温め育む巣に見立てました。




このプロジェクトの最終花です。地震後の恐怖と不安を抱えながらも、一花一花咲かせるということに没頭出来た一年でした。
家族の古着物を材料としてご提供頂いた方、2ヶ月おきに1作品ずつ鑑賞していただいていた方、また、ここ今田淳子ウェブサイトニュースにてご覧いただいていた方、感謝しております!




以下、美術館展示パネルのための文章です。


作家からのメッセージ

 熊本大地震後、肥後六花と共に1年が巡りました。約2ヶ月ごとにひとつの花を咲かせながら展開したHIGO-ROCK(ヒゴ ロック) ! HIGO-ROCCA(ヒゴ ロッカ) ! は、最終花の発表です。

「立てば芍薬、座れば牡丹」と言われる様に、芍薬は美しい女性の姿をたとえる花です。『詩経』には男女が別れの際に再会を約束する花として描かれました。絶世の美女小野小町に思いをつのらせた深草少将が毎日芍薬を植え続け、100本目の芍薬を手に亡くなったエピソードや、与謝野晶子の「緋芍薬 さします毒をうけしより 友のうらやむ花となりにき」という歌には、この花(特に濃い赤紫色の花)独特のなまめかしさ、妖しさを感じます。
薬学、真実と芸術の神Leto(レト)が芍薬エキスをのむことによりApollo(アポッロ)Artemide(アルテミデ)の双子を難産ながら出産した話, 医学神Paeon(パエオン)が化身して芍薬になった話など、芍薬はギリシャ神話にも語られています。漢方薬として現在も良く知られるその根の効能ですが、古代ローマでは20以上の病気の治療に用いられ、その魔術的・奇跡的な力からErba beata(エルバ ベアータ)(祝福草)“と呼ばれ、悪魔や魔女、嵐を遠ざけ、収穫や羊の群れを守る“厄よけの意味を持っていたようです。
 肥後芍薬は、六花のなかでも最も古いものです。他の肥後花と同様、一重の大輪で、花芯がとても立派。品格に満ち凛とした様相です。
 芍薬の学名はPeonia lactiflora(ペオニア ラクティフローラ)Lactiflora(ラクティフローラ)は「乳白色の花」を意味しています。清らかなひかりの母に包まれ、生命の萌え出づる春、復活の日をイメージしました。第6花、白の肥後芍薬です。
2017426
今田淳子

Erba beata(エルバ ベアータ)ひかりの(しとね)(肥後芍薬2017.4

       ミクストメディア(熊本市民の方から募った着物、皮革、セラミック、鈴、硝子、プラスチック、紙などの混合使用)
2017
今田淳子


Pasqua Fiorita ! (パスクァ フィオリータ)

復活祭、開花!

乳いろの大きな花。

曇天がひらく。

初源の光 さしこみ、プットーの 戯れる。

陽春の庭、うらら。

カーニバルのコリアンドリ、ちらちら。




   エルバ ベアータは、イタリア語で「祝福の草」、パスクァは、イースター(キリスト復活祭)の意。
コリアンドリとは、謝肉祭の時期に街ゆく子どもたちがまき散らす色とりどりの丸く小さな紙吹雪のこと。プットーとはエンジェルのこと。ここで筆者は、小さな子どもたちのことを言う。

Pasqua fioritaは、作家の親しい家族が復活祭の日の挨拶で、一般的な言い回しではない。

2017年3月2日木曜日

肥後六花とポートレート

少し前に上通写真館の原田辰之さんから肥後六花作品とポートレートを撮っていただきました。昨日の昼の熊本市は春を通り越してすぐ夏がきますよ、と言っているかのように強い日差しに包まれていました。汗を拭いながら大きな水色の朝顔を作ってからもう7ヶ月が過ぎました。


肥後椿のメッセージ

このシリーズの展示には、毎回少しの文章を添付しています。

作家からのメッセージ

HIGO-ROCK(ヒゴ ロック) ! HIGO-ROCCA(ヒゴ ロッカ) ! プロジェクト第5花は、熊本市の市花、肥後椿です。

つややかな常緑の葉、おめでたい紅白の花の椿は、太古の昔、悪霊退散の呪術的霊木として扱われたといいます。その実のかたちが似ていることからでしょうか、海石榴(ざくろ)とも呼ばれ、万葉集にも歌われました。中から弾けだす種子からは油が採れ、一般に食用・薬用でした。欧州には、1718世紀の交易により初めて持ち込まれ、大流行。ジュゼッペ・ヴェルディのオペラ「椿姫」にも描かれました。現代では、ココ・シャネルのカメリアモチーフでも広く知られたことにより大変愛されている花木です。

肥後椿は、門外不出の秘技、交配研究により生み出された芸術です。平たく開く一重の大きな花弁と力強く広がる梅芯が特徴で、山椿と大きく異なります。その品種は100を超えます。気格と美を競い合い、命を育て咲かせ続けた「花連」の侍たちの情熱とプライドに魅了されたイタリア人肥後椿コレクターのフランコ・ギラルディは、著書「HIGO CAMELLIA(ヒゴ カメリア)」のなかで肥後椿を「第三千年紀のための花 ( un fiore per il terzo millenni(ウン フィオーレ ペル イル テルツォ ミッレンニォ) )」と評しています。「未来に繋ぐべき花」ということでしょうか。

「愛の熱」によって「意識的に」伝え守られ展開されるべき文化や思考は、日常の中にあります。災害や戦渦で、もしくは時代の潮流に取り残され消滅の危機に晒されることもあるでしょう。時には全く客観的な異人の目によって尊ばれ、価値が与えられ、土地を換えつつ生き残っていくのかもしれません。


2017222






Il calore della terraイル カローレ デラ テッラ  大地の熱 (肥後椿2017.2

       ミクストメディア(熊本市民の方から募った着物、木、皮革、セラミック、鈴、硝子、プラスチック、紙などの混合使用)
2017
今田淳子
紅殻(べんがら)

産み、育む潮。

愛と意志の熱。

呑み込む。

霊峰。カルデラの器。

脈打つ。

瑞々しい石榴(ざくろ)の粒。

念が彷徨う。

焼き畑の埋み火。






  caloreとは熱、terraとは、土や大地の意のイタリア語



2017年2月22日水曜日

Camellia HIGO Japonica 熊本市の市花ー肥後椿をモチーフとした作品発表、本日から。

本日2017年2月22日より、熊本市現代美術館スカイギャラリー(無料でご覧いただけるスペースです)にて、肥後六花プロジェクト第5花は熊本市の市花でもある肥後椿の作品「Il calore della terra ― 大地の熱」を発表しております。
3月20日まで。




どうぞご覧下さい!


2017年1月24日火曜日

有用性、至高性(熊本地震後の寄稿内容より)

刷り上がり後なので公開します



「大人の価値観と追い込まれる子どもたち」
今田 淳子

 夜9時。ミラノ市では温かい間接照明の光と愛情に包まれゆったりくつろぐ家族時間。伊の経済を牽引する都市のオフィスに人はいない。一方日本では、大人同様多くの子どもたちも帰宅していない。白熱灯に晃晃と照らされた無機質な学習塾の机に向かっている。
 官民挙げてワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)が叫ばれているが、現実では近年ワーカホリック(仕事中毒)は子どもにまで広がった。過剰な早期学習によりそれは今や幼児期に始まり、小・中学生に蔓延している。下校後学習塾に通うことが当たり前。睡眠時間をのぞいた子どもの生きる時間は教育を受ける時間になった。子どもから遊びが消えた。厚生労働省の発表では学習サービス業の新規求人数は今年も増加傾向。大卒、ポスドクの良き就職先として、そして未だ「より良き人生はより良き進学にあり」とする一様な価値観のための商品として、現在需要と供給の関係が見事に成立している。集中を促すためのパーテーションで区切られた小さな空間、短い休み時間に搔き込むコンビニエンスストアのお弁当、「迅速に」「正確な」答えを導く訓練といえる学習・・・無駄なく有用性に富むが、人間味を欠き空虚で喜びがない。感覚が麻痺するほど毎日耳にする残酷な死や傷害のニュースは、幼少・青年期から与えられた過密な日程に従順で、唯物的な刺激による欲求の発散に慣れ、愛情に飢え、乾きしらけ、歪な生活の中に埋没してしまった孤独な個の叫びではないだろうか。
 世界価値観調査の、「日本の20代は世界一チャレンジしない」「日本の成人の知的好奇心がとても低い」という残念な統計結果は、現在の日本の教育が「学ぶ楽しみ」を奪い「心の老化」を招いていることを証明している。成人の数的思考力は日本に比べ相対的に低いイタリア。しかし「新しい事を学ぶことが好き」の肯定率は日本の倍を示した。生涯学び続ける意欲は、変化に富んだ新時代を生き抜くために必須な人間力である。余暇や芸術を楽しみ、至高性を重んじる国イタリアの人生観・教育観にこれからの個の決断や幸せな暮らしのヒントがあるかもしれない。
 「生きる」を意味するイタリア語「VIVERE(ヴィーヴェレ)」。賞賛や激励を意味し日本でも耳にするViva!〜(ヴィヴァ!〜)の語源である。身体的・精神的両方の生の意味を兼ね備える。昨年4月、突然の大地震から守り抜いた肉体的生。避難所で自発的に働く子どもたちの姿には精神的生が輝き、皆に活力を与えた。Viva!子どもたち。日本語で「する」という意味の使役動詞fareVIVEREを命令形にすると「Mi fai vivere!(ミファイヴィーヴェレ!)」。直訳すると「生きさせて!」だが、「自由にさせて!」「放っといて!」という「解放」の意味が入る。この世に生まれてきた個の「VIVERE(生きる)」の意味を問い、その愛に気付くこと。時には画一的な価値観にしがみつく手をゆるめ、時間を切り刻み詰め込むスケジュールを一掃し、思い切り自らを休息、遊びのなかに解き放とう。個人の心の活性化と思考の小さな変化が生きやすい寛容な社会通念に繋がるように思う。

2017年1月7日土曜日

明けましておめでとうございます!

2017年、酉年。
飛躍の一年にしたいですね!


干支とは関係ないですが、
うちのマスコットCOUCOU`!ちゃんです。

2016年12月21日水曜日

「熊本応援花」第4花ー肥後山茶花、咲きました!

「熊本応援花」 第4花―肥後山茶花、咲きました!

本日2016年12月21日より来年1月17日まで、
熊本市現代美術館スカイギャラリー(無料でご覧いただけるスペースです)にて
肥後山茶花の作品、「La Partenza- 永遠の愛」発表です。

是非ご覧下さい!



作家からのメッセージ

HIGO-ROCK ! HIGO-ROCCA ! 「熊本応援花」、第4花は、肥後山茶花の代表種「大錦」です。「大錦」の花は、その名の通りとても大きく豪華です。日本の冬の垣根に彩りを与えてくれる小ぶりで古風な花という私の山茶花の概念を塗り替えました。端をふんわり桃色に染めた純白の薄い花弁と弾けだすような金色の花芯は、現代の乙女の瑞々しい晴れ姿を思い起こさせます。

今年、私たちはここ熊本で「いのちの尊さ」、「愛」とはなにか、を目の当たりにしました。山茶花の花言葉は、「永遠の愛」、「困難に立ち向かう」です。生と死の交錯する時空で、何事にも優先して考えられるべきことがあらわになった今、「大錦」の花を胸に人生を選択し、強く前進しましょう。



20161220